スマホが普及し始めた数年前から、大学で教える教員のあいだで「板書をノートに書かずスマホで撮影する学生」の存在がたびたび話題になっている。 最近では、レポートをスマホで撮影して画像で送信する学生も出現している。
「出先だったのでPCがないから、スマホで画像にしてメール送信したと話していました。そういう出し方をしようと思いついたことに驚きましたよ。 でも、画像だとマトモに読めなかったらしくて、後日、レポート提出した講義のときに先生から『画像だと読めないので、今後は画像で送らないように』と受講生全員へ向けて注意喚起されました」(都内の女子大学生)
最近ではビジネス向けにプレゼンやミーティングでの板書を撮影するとPDF化できるスマホアプリなど、手書きメモをとらないことを目的としたツールも多い。 それでも、学習の場面ではノートへ手書きするほうが理解を深め、習熟を高めるには効果が高いと言われている。 神奈川大学非常勤講師で情報処理を教える尾子洋一郎さんも、講義の内容を学ぶには、やはり板書は手書きでノートにまとめた方が効果が高いという。
「定期試験の終了直後、受講生にリアクションペーパーを書いてもらうのを恒例にしていますが『ノートをきちんととっておけばよかった』という感想が毎回あります。 板書をノートにまとめることで学べるよう工夫していますし、その内容さえ理解できていれば大丈夫な問題ばかりなので、 テストで思うように答えられなくなって初めて、ノートにまとめる重要性を実感するのでしょう。それでも毎年、似たような感想を書く学生がいます(笑)。
僕の講義では、情報処理のテクニックだけでなくアナログとデジタル、各々の有用性を実感して学んで欲しいと思っています」
しかし、ノートに手書きでまとめる方が効果的とわかっていても、思わず写真に撮ってしまうような状況も存在するという言い分もある。
「パワーポイントでつくったスライドをものすごいスピードでどんどん切り替えられると、手書きノートで追いつくのは無理です。 チョークで黒板に書く板書だって、同じ場所に書いては消し、書いては消しをすばやく繰り返されたら追いつけない。 講義を休んだ友だちに頼まれて、スマホで板書を撮って送ることもあります。 せっかく便利な道具があるんだから、スマホを使いたくなりますよ」(都内の文系大学生)
学生からの授業評価を実施し、大学といえども教員の授業方法を見直すのが今では当たり前となった。 そのため、前述のような板書を記録しづらい授業は減り、代わりに資料を配付されることが多くなっている。 この配付資料を読み込みさえすれば、手書きでノートにまとめるコツを自分で編み出さずとも学生は学ぶ内容を理解しテストも通過できるようになっている。
ところが、この懇切ていねいな資料をスマホで悪用する場面が出現している。 ある私立大学の大学院生は、定期試験の監督補助についたとき試験どころではない騒ぎに遭遇した。
「ノート代わりの資料をすべてスマホで撮っておいて、机の陰にこっそりスマホを置いておきカンニングしていました。 この手口を使うのは留学生に多いという話です。留学生の間で教えあって広まったようですね。 試験監督に見つかり、教務からすべての単位が取り消されますとルールを告げられたら、留学したことすべてをぶち壊すのかと全身全霊で大騒ぎされて大変でしたよ」
カンニングのようなルール違反は論外だが、手軽に記録できるスマホで撮影する行為は今後もなくならないだろう。 OCR(光学文字認識)機能も向上しており、ますます便利になるのは間違いない。 Apple WatchやRing、SmartBandやGoogle Glassなどウェアラブル端末が普及する未来には、学習や記録のためにどのような行動が見られるだろうか。
便利になれば問題が起こるのは当然のこと。教える立場にある学校側がどのような対策をとるのか。
記事出典:Yahoo!ニュース
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